左脳、死んでも生きてるってよ

障害者でもないが健常者でもない。普通でもなければ異常にもなれない日々。

Friday I'm In Love

平成最後の金曜日。

不穏なくらい寒い。

 

radikoから、カネコアヤノの「セゾン」がバイトの閉塞的な職場に流れる。突き刺すように「四月も終わる 四月も終わる」と歌うのでついついセンチがメンタルになっちまう。

 

昔、喫茶店でアルバイトをしていた。時給は850円。薄暗く所狭しとジャズのレコードやポスターが貼られiPadからジャズを流してる。味もアルバイトのレンチンとオーナーの自宅からの手作りだけど、うまい。あちこちボロボロだけど

 

毎週そこに行って16〜20時というクソみたいな時間働いていた。基本的に人がすごく混雑するわけではない。

 

オーナーは昼からずっとビールを飲んでいる。ほとんどスナックのママ。「あたしはサグちゃんのこと好きよ」と言ってくれた。

 

毎週金曜日、キッチンで一緒の彼と付き合ってた。バンドマン。バイトを3つくらい掛け持ちしていたけど全然お金がなかった。部屋にエアコンはなかった。テレビもなく、分厚いノートパソコンだけが唯一の電子機器だった。湿気がこもりやすく常に蒸し暑かった。

 

部屋には事故現場のように彼がいる場所を避けるようにジャンプが積み上げられて、床とほぼ変わらない煎餅布団。そこしか足の踏み場がない。

 

やることはご想像通りのことしかないからいつまでもそうしてお腹が空いたらスーパーに行って買い出しして一緒に料理を作って食べてまた寝てして、浅野いにおさながらのだらっとした毎日を過ごしていた。

 

しかしそんなの長く続くはずがない。

次第に彼のバンド活動が滞り、生活が憤り、その矛先がわたしに向けられるようになった。わたしを無視したり、イライラしてモノに当たった。

 

当時のわたしは仕事をはじめ満身創痍、トドメを刺すかのように親のメンタルがヘラみになり被害妄想で鬼のように連絡してきたりメンヘラを2人もかかえ、仕事は右も左も分からない。とにかく正常な判断はできない状態だった。

 

「俺が困ってるんだから助けてよ。彼女なんだから。」

 

手口が親と一緒だ。

 

蒸し暑い彼の部屋から置いていたコンタクトの液、歯ブラシ、化粧落とし、記憶にないなにかを袋に詰めて、捨てた。生まれて初めてもらった合鍵と別れの手紙を置いて。

 

たくさん泣いてたくさん笑ってたくさん飲んでたくさん食べた恋だった。あれはどうしようもなく恋だった。

 

白くて指が長い綺麗な手を、ジャンプで囲まれたわたしとあなたを、言われて傷ついた言葉を、わたしは袋に詰めてそのまままた金曜日を生きていく。